主役登場のバリエーション
何といっても、この物語の主人公はルフィですから、彼と強敵(ラスボス)とのバトルシーンは、大きな見せ場の一つです。
それは各エピソードのクライマックスとして、
最後に配置されるのがセオリーといえるでしょう。
ボスが前半でやられてしまっては、
全体の戦いが成り立たないことも多いですし、
勝負がスカッと決まって、感動のフィナーレにつながっていくという形は、
戦い(勝負)を扱っている作品には、どうしても必要です。
現実にはそううまくはいかないのが、世の常なのですが、
漫画の世界では、意図的に設定できるのがありがたいです。
とはいえ、同じパターンを繰り返し用いていると、
先は読めるは、新鮮味はないはで、飽きられてしまう恐れが。
長く続いている漫画なら、なおさらのことですね。
主人公が孤独であるなど、主人公側に戦える者が少ない場合、
敵の方の事情だけ考えればいいので、そんなに苦労はしないですし、
ワンパターンになってもやむを得ないといえます。
しかし、「ワンピース」は仲間こそが力であり命。
彼らの存在をなおざりにするわけにはいきません。
「ルフィVSラスボス」という対決が、最後にうまく収まるには、
ルフィが途中で戦闘不能になるのはもちろん、
仲間がラスボスを倒してしまってもいけません。
かといって、仲間が毎度のように倒れていくのも、
痛々しいし、ちょっと問題。
他のクルーはまだしも、「戦闘員」ゾロの扱い方が難しいです。
戦闘能力はルフィに匹敵するともいえますし、
自ら負けを認める状況は、ミホーク戦以降作りづらいですから、
彼の活躍を「適度なもの」にするというのは、かなり大変でしょうね。
ここで、「主人公VSラスボス」を最後に設定するには、
どんな手段があるか考えてみます。
主人公が、何かの理由で遅れて参戦:遅
物語の盛り上げ方としては、王道ともベタともいえる形ですが、
仲間が次々やられていき、もうだめだ‥という時に、
救世主登場!‥やはり、ドキドキワクワク、
スカッとカタルシスも感じさせてくれる、必須パターンです。
「ルール」があって、順番としてやってくる:則
これは、スポーツなどで使われるもの。
トーナメント戦なら、強い者との対戦は後になりがち。
勝ち抜き戦とかの場合、大将は出番まで仲間の戦いを見守るしかありません。
また、きちんとしたルールがなくても、
一対一の戦いを重んじるなどの場合は、
暗黙の了解として、他の戦いの決着を見届けてから、
一騎打ちを行うことも多いようです。
それぞれが別の場所で(同時に)戦うことになる:別
敵にも中ボスクラスの者がいくらかいて、その相手をする場合。
強制的なものもありますし、主人公側の作戦として行われることも。
その先にラスボスがいて、辿り着くのが主人公、とか
ラスボスとの戦いも同時に始まるが、最後に決着など、
バリエーションはいくつかありますが、まとめて。
このパターンは、エピソードの中盤で取り入れられやすいものですね。
「仲間がラスボスにやられる」という場面を描く機会を減らせます。
宿命、因縁などから、相手が決まっている:縁
二人だけの間に何か特別に戦うべき理由がある場合、
他のメンバーは戦闘の権利を譲ったりして、
戦いを見守ることになります。
これも、仲間を健在にしておける、使える手段です。
主人公に決戦を任せて運命を託す:任
本人がそう決心することが前提ですが、
その仲間も、代表として、最も頼りになる者として、
主人公を「大将戦」へ送り出す形。
上の縁に近いものがありますが、頭同士の一騎打ちという意味合いが強く、
両者に強い因縁はないものとしました。
どんな場合でも、多かれ少なかれ、この要素は含まれているとは思いますが‥。
相手が圧倒的なラスボス等の理由で、多人数で相手をする:多
ヒーローである主人公側がそうしても、
読者が納得してくれそうな相手・状況の場合、
協力して戦いに臨むことも。
RPGなどではごく普通のことですが、
漫画ではなかなかそこまでの強者は現れませんね。
もしそうなっても、とどめは主人公が刺す場合がほとんどです。
他にもいろいろあるのでしょうけど、
パッと思いついたのはこれくらいです。
では、「ワンピース」の中では、どのパターンで
「ルフィVSラスボス」となっているのでしょうか。
場所など |
敵対集団 |
ルフィの
対戦相手 |
パターン |
解説 |
とある島 |
アルビダ海賊団 | アルビダ | − | この時点では、まだルフィ一人ですので最初も最後もありません。 |
シェルズタウン |
海軍支部 | モーガン | 任、多 | 「麦わらの一味」としての初バトル。変則的なタッグマッチともいえますが、ボスの止めを主人公以外が刺すという最初にして珍しいパターンでした。 |
オレンジの町 |
バギー海賊団 | バギー | 遅、任、 則、多 |
ルフィが檻に入れられている間に、ゾロがバギーの能力披露の犠牲になったともいえるため、遅の要素あり。ナミの助けもあったので、一応多の要素も。タイマンでの決着はついていない、と言ってもいいのかも‥ |
シロップ村 |
クロネコ海賊団 | クロ | 遅、別 | あらぬ方向に行ったのも、催眠術にかかったのも、クロとの決闘には影響なしともいえますが、一応遅で。最後は同時に決着がつくというスッキリ。 |
バラティエ |
クリーク海賊団 | クリーク | 別 | 一味にそれぞれの事情があったため、別行動となりました。サンジも仲間に準じた立場でしたが、クリークとはほぼ相対しませんでしたね。 |
アーロンパーク |
海賊アーロン一味 | アーロン | 遅、任 | 海に沈められたため、典型的な遅。ただ、全員が完全に戦闘不能だった、というわけでもないので、任もあるかな。 |
ローグタウン |
海軍本部 バギー&アルビダ連合 |
一味に強い戦闘の意思がなく、逃げることが最優先だったので、例外としておきます。 | ||
ウイスキーピーク |
バロックワークス | Mr.5ペア | 遅 | たらふく食べての熟睡で遅ですが、ゾロ一人でも問題なかったでしょうね。 |
リトルガーデン |
バロックワークス | Mr.3ペア | 遅 | ドリーに骨の下敷きにされ遅。Mr.3ペアの個別撃破作戦の結果である、ともいえますが。 |
ドラム島 |
ブリキング海賊団 | ワポル | 則、別、縁 | メリーを食われ、登山を邪魔されで縁。まだ加入前のチョッパーですが、事前に対戦相手を決めていますので則&別。 |
アラバスタ |
バロックワークス | クロコダイル | 遅、別、 縁、任 |
最初に頭同士の一騎打ちを持ってくる、という特殊な例。そこで敗北することで、再戦時には、多くの要素が含まれることになりました。 |
ジャヤ |
べラミー海賊団 | べラミー | 縁、任 | べラミーを探して戦えるのは、出会っていた者だけなので、縁。ゾロはルフィに一任していますので、任。 |
空島 |
神の軍団 | エネル | 遅、縁、任 | ノラに食われて(&逃げ損ねて)遅。再戦、鐘の奪い合いという点で縁。エネルに到達できるのはルフィだけ、ということで皆がアシストに回り任。 |
デービーバックファイト |
フォクシー海賊団 | フォクシー | 則、任 | ルールに則った試合なので則ですが、メインイベントを任せたかもなので、任。 |
ロングリングロングランド |
青キジ | 青キジ | 任、多、 | 初めは多ですが、ルフィの決心で任に。結果は惨敗でしたが、一味を救うことに。 |
ウォーターセブン |
フランキー一家 | フランキー | 縁 | フランキーからの御指名‥頭同士のタイマン勝負をしようということで縁。 |
CP9 | ルッチ | 偶然 | ルッチがボス的立場であるという認識は、この時点ではなかったので、組み合わせはたまたまともいえますね。 | |
エニエス・ロビー |
CP9 | ルッチ | 別、縁、任 | 先の戦いでルッチの強さを実感したため、ルフィ自身が選択し、皆も同意で縁&任。同時スタートではないものの、それぞれの対戦相手は明確に分かれていたため別。 |
スリラーバーク |
モリア一味 | モリア | 遅、任、多 | モリアにはぐらかされ、遅。オーズ戦はまさしく多ですが、最終戦は、皆がルフィに任せているので任。 |
トビウオライダーズのアジト
|
トビウオライダーズ | (モトバロ) | − | デュバルと相対してはいますが、サンジの因縁の方が上なので、例外に。 |
シャボンディ諸島 |
海軍本部 | (戦桃丸) | − | 皆強敵ですが、その中のボス的存在の黄猿とは戦っていないので、これも例外で。 |
アマゾン・リリー |
九蛇 | サンダーソニア &マリーゴールド |
− | 独りきりでの冒険となりましたから、選択の余地はありません。ボスといえるハンコックと戦わずに済んだのは、彼の器の大きさゆえと言えましょう。 |
インペルダウン |
大監獄 | マゼラン | 偶然、任、 遅、縁、多 |
ここでは例外的に、監獄内で出会った者との関係で‥初戦は偶然&変則的な任といった感じ。再戦時は、周りの者がルフィを戦わせまいと逃がす壁になるという、珍しいパターンの逆任ですが、結果的に多くの要素を含むことになりました。決着をつけないまま終わるというのも意外です。 |
海軍本部 |
海軍本部 | ガープ他多数 | 白ひげ海賊団VS海軍&七武海の戦争という特殊な状況にあるので、型に当てはめるべきではないのかも。参戦の目的はあくまでエース救出であって、打倒ラスボス(センゴクとするにしても)ではないですし‥エースに到達するための最後の関門ということで、ガープとの一騎打ちをラスボス戦とするなら、縁の要素が大きいですが、遅、別、任、多の要素も少なからず含まれているといえそう。 |